- 高額療養費制度の仕組みと2026年8月からの変更点
- 医療費控除の対象・申請方法・落とし穴
- この2つを理解すれば民間の医療保険が不要な理由
- 3つの知識を組み合わせた最適な医療費対策
「病気になったときの医療費が心配」「医療保険に入っていないと不安」。この不安の多くは、3つの知識を知らないことから来ています。今回は「高額療養費制度」「医療費控除」「保険不要論」の3つをまとめてお伝えします。この3つを理解するだけで、医療費への不安が大きく解消されます。
なぜこの3つをセットで理解する必要があるのか
高額療養費制度 → 月単位で自己負担に上限を設ける公的制度 → 「いくら病院にかかっても上限以上は払わなくていい」 医療費控除 → 年間の医療費を確定申告で控除する制度 → 「払った医療費の一部が税金として戻ってくる」 保険不要論 → この2つを理解すれば民間の医療保険は基本不要 → 「保険料を払うより貯蓄・投資に回したほうが良い」
この3つはバラバラに理解するより、セットで理解することで「医療費の全体像」が見えてきます。
知識① 高額療養費制度
「どんな高額な医療費でも、自己負担に上限がある」
高額療養費制度とは、健康保険には1か月の自己負担の上限があり、年収370〜770万円なら月約8〜9万円。100万円の医療費がかかっても、窓口3割の30万円ではなく上限額までで済みます。
例:100万円の医療費がかかった場合 通常(3割負担):30万円 高額療養費制度適用後:約8〜9万円(年収370〜770万円の場合)
この制度を理解するだけで、高額な医療保険の必要性が大幅に下がります。
2026年8月からの重要な変更点
2026年8月から高額療養費制度の自己負担上限が引き上げられます。特に年収650万円〜1,160万円前後の方は負担増が大きくなる一方、年間上限の新設により長期療養者は負担軽減となるケースもあります。第1段階は2026年8月から月額上限を全所得区分で引き上げ、第2段階は2027年8月から所得区分を5区分から13区分に細分化されます。
年収別の負担増(2026年8月から) 年収約370万円未満:月+3,900円 年収約370万円〜770万円:月+5,700円 年収約770万円〜1,160万円:月+11,700円 年収約1,160万円以上:月+17,700円
ただし心配しすぎなくていい理由
多数回該当の限度額は据え置きです。長期的な治療が必要な場合の負担は抑えられており、一時的な入院・手術であれば負担増は数千円〜1万円程度です。
申請方法
① 事前申請(おすすめ) → 健康保険組合に「限度額適用認定証」を申請 → 窓口での支払いを最初から上限額にできる ② 事後申請 → 一度全額支払った後に申請・還付してもらう → 申請から還付まで2〜3ヶ月かかることがある
会社の健康保険組合の付加給付も確認する
保険の考え方の記事でもお伝えしましたが、加入する保険者(健保組合等)には独自の付加給付がある場合があります。
国の高額療養費制度(月上限:約8〜9万円) ↓ 会社の健康保険組合の付加給付 → さらに上限が下がることがある(例:月2.5万円など)
まず自分の会社の健康保険組合に確認することが最優先です。
知識② 医療費控除
「払った医療費の一部が税金として戻ってくる」
医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告することで所得控除が受けられる制度です。
計算式 (1年間の医療費合計) -(保険金などの補填額) - 10万円 = 控除額(上限200万円)
対象になるもの・ならないもの
✅ 対象になるもの → 病院・歯科の治療費 → 処方箋薬の購入費 → 通院のための交通費(電車・バスなど) → 入院中の食事代(保険適用分) → 不妊治療・妊婦健診 → 市販薬(セルフメディケーション税制の対象品) ❌ 対象にならないもの → 美容目的の治療 → 健康診断(治療に繋がった場合は対象) → 予防接種(一部を除く) → 通院の自家用車ガソリン代・駐車場代
子育て世帯は特に意識すべき理由
子供が多いと医療費がかさみやすいです。
子供3人いる場合 → 風邪・怪我・歯科など年間の医療費が積み重なりやすい → 10万円を超えるケースが出てくる → 確定申告で控除を受けられる可能性がある
大切な落とし穴:高額療養費で補填された分は差し引く
ここを知らない方が非常に多いです。
医療費控除の計算 ↓ 高額療養費・保険金などで補填された金額は 医療費から差し引く必要がある ↓ 補填された金額を引いた後に10万円を超えた分が控除対象
「高額療養費をもらったのに医療費控除の計算に含めてしまう」というミスに注意してください。
申請方法
① 医療費の領収書を1年分まとめておく → 病院・薬局・交通費の領収書をすべて保管 ② 確定申告期間(翌年2〜3月)に申告する → マイナポータルとe-Taxを連携すると医療費データが自動入力可能 ③ ふるさと納税のワンストップ特例に注意 → 医療費控除のために確定申告をする場合 → ふるさと納税もワンストップ特例ではなく確定申告で申告する
知識③ 保険不要論
「この2つを理解すれば民間の医療保険は基本不要」
保険の考え方の記事で詳しくお伝えしましたが、改めて整理します。
なぜ民間の医療保険が不要なのか
高額療養費制度 → どんな高額な治療でも月数万円〜10万円程度で収まる 会社の付加給付 → さらに自己負担が下がることがある 医療費控除 → 払った医療費の一部が税金として戻ってくる 貯蓄がある程度ある → 残りは自己資金でカバーできる
この4つが揃えば、民間の医療保険がカバーする領域はほぼなくなります。
【実体験】足を骨折して入院・手術をした話
理屈だけでなく、自分自身の実体験からも同じ結論に至りました。まだ民間の医療保険に加入していた頃、足を骨折して入院・手術をしたことがあります。このときは給付金が出て、受け取った保険金だけを見れば「お金としてはプラス」になりました。
この経験だけを切り取ると「保険に入っていて良かった」と思えます。実際、骨折直後はそう感じました。しかし冷静に振り返ってみると、印象が変わりました。
→ 高額療養費制度のおかげで、入院・手術にかかった自己負担額は もともと数万円程度で済んでいた → その自己負担額は、それまでに払い続けてきた保険料の総額に 比べると大幅に安かった
つまり「保険金でプラスになった」のではなく、「高額療養費制度がなければもっと大きな負担になっていたはずが、そもそも制度のおかげで自己負担自体が小さかった」というのが実態でした。保険に入っていなくても、貯蓄でその自己負担分をまかなうのは十分可能な金額だったということです。
この体験から感じたのは、よほどの頻度で怪我や入院を繰り返さない限り、保険料として払い続けた金額を貯蓄・投資に回したほうが、トータルでは上回るのが難しくないということです。1回の骨折入院で「保険に入っていて良かった」と感じても、それは長年払い続けた保険料の元を取れたことを意味するわけではありません。
「でも2026年8月から負担が増えるから保険が必要では?」という疑問に答える
引き上げ幅は区分ごとに約4〜38%で、高所得区分ほど上昇率が大きい設計となる一方、年間上限の新設で長期療養者の負担には歯止めがかかります。
月数千円〜1万円程度の負担増に備えるために、毎月数千円〜数万円の保険料を払い続けるのは合理的ではありません。
保険料を払い続けるコスト → 月5,000円×12ヶ月×20年=120万円 2026年8月の負担増 → 月+5,700円(年収370万〜770万円の場合) → 年間+68,400円
保険料として払う総額より、貯蓄として持っておくほうが合理的です。
ただし例外もある
民間保険が有効なケースも一部あります。
→ 保険会社の団体保険が格安で加入できる場合 → 貯蓄が全くない場合の短期的な備え → 特定の疾病リスクが高い場合(家族の既往歴など)
ただし複雑な保険・貯蓄型保険はNGです。保険の考え方の記事でお伝えした通り、どうしても加入するならシンプルな掛け捨て一択です。
3つを組み合わせた最適な医療費対策
まとめると、医療費への対策はこうなります。
STEP1:高額療養費制度を理解する → 会社の健康保険組合の付加給付も確認する → 限度額適用認定証を事前に取得しておく STEP2:医療費の領収書を年間まとめておく → 10万円を超えたら確定申告で医療費控除を申請する → ふるさと納税のワンストップ特例と確定申告の関係に注意 STEP3:民間の医療保険を見直す → 不要な保険を解約・減額する → 浮いた保険料を貯蓄・投資に回す STEP4:手元に生活防衛資金を持っておく → 年収別家計シミュレーション記事でお伝えした通り → 現金100万円程度を手元に置いておく → いざというときはここから出す
まとめ
- 高額療養費制度で月の自己負担には上限がある(年収370〜770万円で月約8〜9万円)
- 2026年8月から自己負担上限が引き上げられるが月数千円〜1万円程度の増加
- 長期療養者は年間上限の新設で負担が抑えられるケースもある
- 医療費控除は年間医療費が10万円を超えたら確定申告で申請できる
- 高額療養費で補填された分は医療費控除から差し引く必要がある
- 実際に骨折で入院・手術をした経験でも、高額療養費制度のおかげで自己負担は保険料の総額より大幅に安かった
- この2つを理解すれば民間の医療保険は基本不要
- 浮いた保険料は貯蓄・投資に回すほうが合理的
- どうしても保険に入るならシンプルな掛け捨て一択
医療費への不安は「制度を知らないこと」から来ていることがほとんどです。この3つの知識を身につけるだけで、不安が解消され家計にも余裕が生まれます。
⚠️ 高額療養費制度・医療費控除の詳細は年収・家族構成・加入保険によって異なります。2026年8月からの制度変更については最新情報を厚生労働省・各健康保険組合の公式サイトでご確認ください。


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